
泉大津市は、東洋ライスとの連携により、米の保存に関する従来の常識を転換する「泉大津市熟成米プロジェクト」の実証実験を開始した。
米の生産・流通・備蓄の在り方を見直す取組み

熟成保管庫前での記念撮影
2月27日(金)に実施された報道発表会において、「泉大津市熟成米プロジェクト」の概要を公表するとともに、米の「熟成保管庫」のお披露目が行われた。
近年、米の需給や価格の不安定化が全国的な課題となる中、生産量の抑制を前提とした需給調整だけでは、安定供給の確保が難しくなっているとの指摘もあるそう。

熟成保管庫に入れる前の米
「泉大津市熟成米プロジェクト」は、「時間が経つと米の品質は低下する」という“古米の概念”そのものに着目し、米を計画的に長期保管することで、生産・流通・備蓄の在り方を見直そうとする取組みだ。

熟成保管庫に米が入った様子
東洋ライスが保有する熟成保管技術は、米を適切な環境で管理することにより、長期保管においても品質の維持を可能とし、さらに味や価値の向上につながる可能性を有しているという。今回の実証実験では、この技術を活用し、実際の保管・運用を通じた検証を進めていく。
これまで泉大津市では、全国の生産地自治体と連携し、学校給食を軸とした有機栽培米・特別栽培米の安定調達や、米のダイレクトサプライチェーンの構築に取り組んできた。今回のプロジェクトは、こうした取組みを基盤とし、消費地自治体の立場から、米の生産・保管・活用を一体で捉え直す新たなモデルの構築を目指すものだ。
不測の事態においても安全・安心な食料供給を支える仕組みとして、行政が主体となり、長期的な視点で検証を行っていく点に、「泉大津市熟成米プロジェクト」の特徴がある。
泉大津市長と東洋ライス代表のコメント

泉大津市・南出賢一市長は「泉大津市熟成米プロジェクト」について、「泉大津市ではこれまで、生産地との連携による米のダイレクトサプライチェーン構築に取り組む中で、生産と消費の両面から米の需給バランスを調整することの難しさを強く感じてきました。特に近年は、米をはじめとする農作物の価格高騰により、泉大津市をはじめ多くの消費地自治体が、学校給食の食材調達においても大きな影響を受けています。
今回の『米の熟成保管技術』は、こうした課題に対し、日本人の主食である米を安定的に生産し、確保していくための新たな可能性を示す、革新的な取組みであると考えています。『品質を維持した米の長期保管』が可能になることで、米の生産拡大や食料の安定確保、将来への備えなど、日本が抱える『食と農』の課題を構造から変えていく可能性を秘めていると期待しています。
消費地である泉大津市から、米の生産・保管・活用を一体で捉えた新たなモデルを全国に発信し、日本全体をより豊かにする取組みへとつなげていきたいと考えています。」とコメントを寄せた。

また、東洋ライスの雜賀慶二代表取締役社長は、「当社では、米の熟成保管技術について、実は平成16年の時点ですでに発表していました。しかし当時は、社会的な課題意識や需要が十分に成熟しておらず、この技術が活かされる場面はありませんでした。近年、米不足や価格高騰、備蓄米をめぐる課題が顕在化する中で、ようやくこの技術が社会に求められる時代が来たと感じています。
これまで米の需給問題は生産地側の課題として捉えられがちでしたが、人口が集中する消費地の自治体が主体となって取り組むことには大きな意味があります。泉大津市と連携し、社会的信用の高い自治体とともに社会実装に挑戦することで、この技術は初めて全国に広がる力を持つと考えました。
米を長期にわたり適切に保管し、時間を価値に変えることで、生産者は安心して米を作り、消費者は安定した価格で美味しい米を手にすることができます。この取組みを通じて、日本人の主食である米を、次の世代へ安定的につないでいく社会を実現したいと考えています。」とコメントしている。
今後の展開
泉大津市では、「泉大津市熟成米プロジェクト」において、米を最大5年間にわたり段階的に熟成保管し、毎年試食会を実施することで、食味や品質面の変化を継続的に検証していく。
併せて、実証結果を踏まえながら、「熟成米」を備蓄米としての活用をはじめ、学校給食やふるさと納税返礼品としての展開可能性についても検討していく。
今後は、この取組みを起点として、生産地自治体および消費地自治体の双方へと横展開を図り、米の生産・保管・活用を一体で捉えた持続可能なモデルの構築を目指していくという。
古米の概念を問い直し、米不足・価格高騰に対応するモデルの構築を目指す「泉大津市熟成米プロジェクト」に注目だ。
泉大津市公式HP:https://www.city.izumiotsu.lg.jp/index.html
(yukari)